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16話 お泊まり会

Penulis: ニゲル
last update Terakhir Diperbarui: 2025-04-26 10:52:15

「大丈夫か?」

てっきり胸倉を掴み上げられて殴られるかと思ったが、手は肩を掴み尻餅を突いてしまった私を立たせてくれた。

「えっ……あ、ありがとうございます」

「ちっ、そんな怖がるなよ。噂とかでそうなるのは分かるけど」

顔こそ怖いが健橋先輩は意外と柔らかい雰囲気で、だがこちらと会話をするわけでもなく一回舌打ちをすると隣を通り過ぎて去っていく。

「えーっと、大丈夫?」

「う、うん。別になんともない……でも怖かったぁ……」

拍子抜けに近い感情があるとはいえあの瞳に睨まれるのは流石に肝が冷えた。イクテュスと戦う時のような緊張感だった。

とりあえず怪我がなかったことに安堵し私達は気を取り直して学校から出て帰路につく。

「あのー君達そこの中学の子かな?」

しかし今度は身長の高い中性的な、男性だとしても女性だとしても魅力的に映るイケメンさんに話しかけられる。

「ナンパですか……? そういうのはお断りしてます」

波風ちゃんがスッと私の前に出てイケメンさんに対して威嚇する。しかしこの人はキョトンとした顔つきで戸惑っている。

「あ、あぁ……わたしが男に見えたって口か。よく間違われるんだよね。あと私は君達の一個上で女の子だからね……ほら」

彼女は鞄から学生証を出して私達に見せる。学生証は近くの優秀な子達が集まる学校のもので、そこに桐崎橙子という名と性別が女性であることが記されている。

「桐崎……橙子? あの神童って呼ばれてる?」

「波風ちゃん知ってるの?」

「噂だけどね。勉強も運動も完璧にこなしておまけに顔も良くて男子からも女子からもモテる神童がいるってね」

細かく聞いてみれば確かにちょっとだけどこかで耳にしたような気がする。

「あはは……まさか他校まで噂になってるとは……まぁわたしのことはいいよ。それより健橋神奈子がどこにいるか知っているかい? 彼女に会いたくてね」

「健橋先輩に……?」

正直あの不良の頂点に立つ健橋先輩と、学生のお手本のような橙子さん。接点などまるでなく二人が会おうとしていることにギャップを感じで首を傾げてしまう。

「健橋先輩ならもう帰りましたけど……あの人に何か用があるんですか?」

「あぁ……いやちょっとね。君達には関係のない話だよ」

明らかに何かを隠し誤魔化す。しかし健橋先輩と神童様に何があっ
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